日本語講座 03 「誤用2・慣用句」2010/03/11 更新

豊富な慣用句は日本語の表現の豊かさを生んでもいるのだが、母語話者でさえ誤用が多く、
外国人学習者にはこれも高い敷居になっている。

ここでは母語話者が犯しやすい誤りを集めてみた。
慣用句そのものの誤りと、使い方の誤りを混在させてあるので気をつけてください。

なお、余りにも蔓延してしまった誤用は、それと気が付かないかもしれない。

解答・解説はからどうぞ。

01 今春の人事移動の内示があったよ。
02 田中君、君に白羽の矢が当たって、○○支店長に決まったよ。

03

支店長ですか。でも遠いですねえ。栄転なのか左選なのか・・・。
04 自信ないですねえ、私では役不足ではないでしょうか。
05

ま、折角の出世街道だ。流れに棹差しちゃだめだよ。

06 はい、遠いけれど支店長ならば光栄なことです。恩の字です。
07 まあこれで君も、押しも押されぬ支店長だ、ってわけだ。
08 そうそう、この間のミス、責任転換しないで自分で処理しておけよ。
09 飛ぶ鳥跡を濁さず、と言いますからちゃんと片をつけておきます。
10 3月に入って小春日和が続くね。もうすぐ本格的な春だなあ。

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問題1

今春の人事動の内示があったよ。

勤務部署が「移動」したりするので、ついついこちらを使いそうになる。

正しくは、「今春の人事異動の内示があったよ。」

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問題2

田中君、君に白羽の矢が当たって、○○支店長に決まったよ。

語源由来辞典によれば、

引用

白羽の矢が立つは、神への供え物として人間の体を捧げる「人身御供(ひとみごくう)」
に由来する。
神の生贄として差し出される少女の家の屋根に、目印として白羽の矢が立てられた
という俗信から、犠牲者として選び出される意味となった。

現代では、犠牲者として選び出される意味が薄れ、「次期社長候補として白羽の矢が
立った」など、多くの中から抜擢されるたとえしても使われる。

また、矢を的に当てることの連想からか、「白羽の矢が当たる」といった表現をされることもある
が、上記の由来から「立つ」が正しく、「当たる」とするのは誤りである

引用ここまで(文字の色は、Craneの独断である)

正しくは、「田中君、君に白羽の矢が立って、○○支店長に決まったよ。」

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問題3

支店長ですか。でも遠いですねえ。栄転なのか左選なのか・・・。

うっかりミスであろう。
しかし、最近のワープロソフトではこんな変換はされず、一発で正しく変換される。

「左遷」

大辞泉によれば、
「昔、中国で、右を尊び左を卑しんだところから、低い地位・官職におとすこと。」
とある。
「右に出る者はいない」とも関係がある。

「支店長ですか。でも遠いですねえ。栄転なのか左遷なのか・・・。」

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問題4

自信ないですねえ、私では役不足ではないでしょうか。

意味の取り違え。
困ったことに「役不足」をこのような意味に受け取っている若い人が増えているらしい。

つまり、「私では力不足で、その役には向いていない」という意味に使っているのだ。

正しくは「役の方が、持っている力量に相応しくない」という意味。
「君は係長に内定したよ。課長でも務まる力量があるのに、君には役不足だよなあ。」
のように使うのが正しい。

この問題の場合、「オレは支店長以上の力量があるんだゾ!」と言っていることになるのだ。
謙遜していうならば、「力不足」「間に合わない」などを使用すればよい。

「自信ないですねえ、私では力不足ではないでしょうか。」
「自信ないですねえ、私では間に合わないのではないでしょうか。」

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問題5

ま、折角の出世街道だ。流れに棹差しちゃだめだよ。

意味の取り違え。
困ったことに「流れに棹差す」をこのような意味に受け取っている若い人が増えているらしい。

つまり、「流れに逆らう」という意味に使っているのだ。

正しくは「流れに乗る」「時流にうまく乗る」という意味。
川を舟で下るとき、上手に流れに乗れば、速く下ることができる。
それを「流れに棹差す」と言ったのである。

この問題の場合、「時流に乗っちゃだめ」と言っていることになるのだ。

どう言い換えたらいいかな。
「ま、折角の出世街道だ。流れに棹差してうまく進むことだな。」
「ま、折角の出世街道だ。流れに逆らっちゃだめだよ。」

P.S.

「情に棹差しゃ流される」とは関係がない、という説もあるが、
「流れに乗る」という意味では同じである。
「感情に逆らう」という意味ではない。
情の流れに掉さして、その流れに乗ってしまうと、もう理性的な判断ができなくなるのだ。

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問題6

はい、遠いけれど支店長ならば光栄なことです。恩の字です。

誤字。
ありがいことなので、つい「恩」を使ったのであろう。

正しくは「御の字」。

大辞林には次のようにある。

〔補説〕 もと遊里語。「御」という字を付けたくなるほどのもの、の意

[1] たいへん結構な物。また、そのような人。
     ・今の世の―の客〔出典: 浮世草子・織留 3〕

[2] ありがたいこと。満足なこと。
     ・五千円なら―だ

さらには語源由来辞典を参照されたし。

「はい、遠いけれど支店長ならば光栄なことです。御の字です。」

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問題7

まあこれで君も、押しも押されぬ支店長だ、ってわけだ。

誤った短縮。
大体「押しも押されぬ」では文法的にもおかしい。

正しくは「押しも押されもせぬ」。

大辞林には次のようにある。

どこへ出ても圧倒されることがない。実力があって堂々としている。
押すに押されぬ。「―財界の大立て者」
「押しも押されぬ」とするのは誤り。

よって正しくは、
「まあこれで君も、押しも押されもせぬ支店長だ、ってわけだ。」

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問題8

そうそう、この間のミス、責任転換しないで自分で処理しておけよ。

語感からの誤りか。
なんとなく正しいような気がしてくるのが不思議である。

正しくは「責任転嫁」。

大辞林にはなかったが、「転嫁」単独では次のようにある。

自分の罪・責任などを他になすりつけること。「失敗の責任を―する」
心理学で、ある対象に対する感情が、関係のある他のものにも及んでいくこと。

なお、「転換」は、

別のものに変えること、特に、傾向・方針などを、違った方向に変えること。
  また、別のものに変わること。「政策の―をはかる」「話題を―する」「配置―」

精神分析の用語。抑圧された願望が、身体的症状となって外部へ表れること。

とある。

よって正しくは、
「そうそう、この間のミス、責任転嫁しないで自分で処理しておけよ。」

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問題9

飛ぶ鳥跡を濁さず、と言いますからちゃんと片をつけておきます。

ちょっと不適切な問題だったかもしれない。

正しくは「立つ鳥跡を濁さず」。としたかったのであるが、

大辞林には次のようにある。

立ち去る者は、あとが見苦しくないようにすべきであるということ。
退きぎわのいさぎよいことのたとえ。

とある。
ところが、大辞泉では、

立ち去る者は、あとが見苦しくないように始末をする。飛ぶ鳥跡を濁さず。

とあるのだ。

そこで「飛ぶ鳥跡を濁さず。」で調べてみると、
大辞泉でも大辞林でも、

「立つ鳥跡を濁さず」に同じ。

とある。
あちゃあ〜、許容範囲なのか。

よってこの問題は、
立つ鳥跡を濁さず、と言いますからちゃんと片をつけておきます。」が正解であるが、
飛ぶ鳥跡を濁さず、と言いますからちゃんと片をつけておきます。」も許容範囲である。
となる。

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問題10

3月に入って小春日和が続くね。もうすぐ本格的な春だなあ。

大辞泉では、

初冬のいかにも小春らしい穏やかで暖かい日和。
《季 冬》「玉の如き―を授かりし/たかし」。

とある。

「小春」は冬の季語であり、大体11月から12月にかけての天気の良い穏やかな日をさす。

この問題は三月だから何と言えばよいのだろう。

ちょっとかっこよく季語を使って、
「3月に入って野遊び日和が続くね。もうすぐ本格的な春だなあ。」

カッコ良過ぎる・・・。

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